示談交渉は何のためにするのか?
器物損壊罪のような親告罪で逮捕された案件では、弁護士は被害者との示談交渉を重視します。
示談交渉は、被害者に謝罪し、損害を賠償するだけでなく、不起訴処分にしてもらうためにも重要だからです。
目次
1.勾留請求が却下されても一件落着ではない
酔っぱらって暴れてしまい、人の物を壊してしまった。
例えば、居酒屋で暴れて、店の皿や備品を壊してしまい、店の人が警察に通報した場合は、器物損壊罪を犯したものとして逮捕されてしまいます。
逮捕された後でも検察官の勾留請求を取りやめさせたり、勾留請求がされたとしても裁判所に却下されたりすれば、数日警察署に留め置かれただけで、被疑者(逮捕された人)は釈放されます。
被疑者が釈放されても一件落着となるわけではありません。
被疑者を起訴するかどうかは、検察官が捜査を続けて、決定することだからです。
弁護士も引き続き、不起訴処分となるように弁護活動を続けます。
2.不起訴処分となるケース
検察官が不起訴処分とするのは次の場合です。
- 1. 事件が訴訟条件を満たしていない場合。
- 2. 訴訟条件を満たしていても、被疑事実が犯罪構成要件に該当しない場合や犯罪成立阻却事由が認められる場合は、「罪とならず」と言う理由で不起訴処分とする。
- 3. 被疑事実を認定すべき証拠がない事が明白な場合、又はその証拠が不十分な場合。「嫌疑なし」、「嫌疑不十分」との理由で不起訴処分とする。
- 4. 被疑事実を認定すべき証拠があるものの、法律上、刑を免除すべき時に当たる場合は、「刑の免除」の理由により、不起訴処分とする。
- 5. 被疑事実を認定すべき証拠があり、刑が免除される時に当たらない場合でも、被疑者の性格、年齢、境遇、犯罪の軽重、情状、犯罪後の情況により訴追を必要としない場合は、「起訴猶予」として不起訴処分とする。
弁護士が不起訴処分を目指して弁護活動をする場合は、これらの5つのうちのいずれかに該当することを主張します。
3.親告罪の場合は被害者による告訴取消しを求める
勾留請求を取り下げさせた後、弁護士は、被害者との示談交渉を行うことがありますが、その主な目的は、不起訴処分を目指すことです。
器物損壊罪は、「他人の物を損壊し、又は傷害した者は、三年以下の拘禁刑又は三十万円以下の罰金若しくは科料に処する。(刑法261条)」と言う犯罪ですが、「告訴がなければ公訴を提起することができない。」という親告罪に当たります。(刑法264条)
つまり、被害者が告訴した場合だけ起訴されるわけで、一旦逮捕されたとしても、被害者が告訴を取り下げた場合は、検察官が判断するまでもなく、「事件が訴訟条件を満たしていない」ものとして、不起訴処分となります。
そこで、弁護士は被害者との示談交渉を通じて、告訴を取り消してもらうことを目指すわけです。
告訴取消しは「公訴の提起があるまで」の間にしなければなりません。
勾留請求が認められてしまった場合は、検察官は10日または20日間の勾留期間内に起訴するか不起訴処分とするかを判断するため、弁護士としてもタイムリミットを意識しなければなりません。
勾留請求が認められなかった場合でも、早めに告訴を取り消してもらう必要があります。
4.被害者との示談交渉のポイント
示談交渉は、被疑者側が被害者に謝罪したうえで、被害の賠償を行なうものです。
ただ、器物損壊罪のような親告罪の場合は、被疑者側の目的は、告訴を取り消してもらうことです。
被害者が謝罪や賠償は受け入れるけど、告訴の取り消しには応じないといった対応をすることも予想されます。
このような場合、謝罪して賠償金を支払っても起訴されてしまう可能性があるため、被疑者側としては、それでも謝罪して賠償金を支払うのかよく考える必要があります。
もっとも、実際の謝罪の場では、謝罪して賠償するから、代わりに告訴を取り消してほしいと言った交渉事のような態度で臨んでしまうと、被害者側からは、「本当に反省しているのか」と疑問符を付けられてしまい、告訴の取り消しはおろか、謝罪さえ受け付けてくれないこともあります。
やはり、告訴を取り消してほしいということは、前面に出さず、まずは、被疑者本人が素直に謝罪して賠償し、頃合いを見計らって、弁護士から告訴の取り消しをお願いするのがよいでしょう。
5.被害者が告訴取消しに同意した場合
被疑者本人や弁護士が被害者の方に謝罪し、被害者が告訴取消しに同意した場合は、示談書と告訴取消書を作成します。
示談書は、被疑者から被害者の方へ謝罪する旨、また、損害賠償金としていくら支払うのかを記載します。
更に忘れてはならないことが、被害者が被疑者の謝罪を受け入れて、「許し」、被疑者への「告訴を取り消す」旨の一文です。
親告罪ではない場合は、「処罰を求めない」と言う文言になりますが、親告罪では、「告訴を取り消す」とはっきり記載します。
また、これとは別に、告訴取消書を作成して、「告訴を取り消します」と記載します。
いずれも、弁護士が文章を起草したうえで、被害者の方に内容を丁寧に説明し、署名と押印をもらいます。
被害者の署名と押印をもらったら弁護士は直ちに、検察官に示談書と告訴取消書を提出します。
検察官からは、後日、被害者の方に確認の連絡が入ることがあります。
「示談書の調印が真意によるものかどうか」
の確認が主になりますが、弁護士の説明が不十分だと、真意ではないとか、誤解していたなどと言われてしまうこともあります。
その意味でも、示談交渉の際は、被害者の方に丁寧に対応することが非常に大切だということです。
6.刑事弁護はスピードが大切。今すぐ千葉・船橋市の津田沼総合法律事務所へご相談ください
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刑事弁護ではスピードが大切です。
逮捕されてから如何に早く弁護士に相談するかで、その後の状況が違ってきます。
親告罪で確実に不起訴処分にしてもらうためには、被害者との示談交渉が非常に重要です。
被疑者本人だけで謝罪しても、告訴取消しの同意が得られないこともあるので、やはり、弁護士が同席したほうが成功率は高いです。
千葉・船橋市の津田沼総合法律事務所なら、夜間や土日祝日なども対応しているので、ご依頼いただけばすぐに弁護活動に取り掛かり、不起訴処分につなげます。