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不起訴

1 不起訴とは

不起訴とは検察官が公判請求しないことをいいます。わかりやすく言うと、検察官の判断によって裁判を開かずに刑事手続きを終了させる処分です。逮捕されても必ずしも刑事裁判にかけられるわけではなく、裁判所に起訴するかどうかを決める権限が検察官にはあるのです。
検察統計年報によりますと、令和元年における起訴人員(略式命令請求を含む)は28万2844人、不起訴人員は57万6677人で、検察庁終局処理人員総数の起訴率は32.9%でした。
https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0003274052
このデータからわかるように、検察官が起訴する確率は決して高くないのです。そのため被疑者にとっては不起訴処分を獲得できるかどうかが刑事手続き前半の最大の関心事になります。
この記事では不起訴となる理由について説明し、不起訴処分のメリット、また獲得するための具体的な方法についても解説します。
 

2 不起訴となる理由

不起訴処分となる理由は、法務省の「事件事務規定」に以下のものを中心に全20種類が定められています(75条2項)。
 

⑴ 訴訟条件を欠くことを理由とするもの

  • ・被疑者死亡、法人等消滅
  • ・裁判権がない
  • ・親告罪の告訴・告発・請求の欠如・無効・取消し
  • ・道路交通法上の通告欠如
  • ・道路交通法上の反則金納付済み
  • ・確定判決あり
  • ・保護処分済み
  • ・起訴済み(公訴の取消しも含む)
  • ・刑の廃止
  • ・大赦
  • ・時効完成

 

⑵ 事件が罪にならないことを理由とするもの

  • ・被疑事実が犯罪に該当しないとき、又は犯罪の成立を阻却する事由のあることが証拠上明確なとき
  • ・刑事未成年
  • ・心神喪失

 

⑶ 犯罪の嫌疑がないこと(人違い、証拠がないことが明白)、または十分でないこと(証拠不十分)を理由とするもの

 

⑷ 犯罪の嫌疑が認められる場合でも、犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないこと(起訴猶予)を理由とするもの

 

⑸ それ以外

・刑の免除
 
令和2年版犯罪白書 によると、令和元年の不起訴人員(過失運転致死傷等及び道交違反を除く。)の理由別統計は以下のとおりです。不起訴処理された7割以上が起訴猶予によることがわかります。
 

3 不起訴のメリット

不起訴によって被疑者に得られる主なメリットは、以下のとおりです。
 

⑴ 釈放される

不起訴処分となった時点で逮捕・勾留という身体拘束が解かれ、ただちに日常生活に戻ることができます。
 

⑵ 刑事手続きから解放される

原則として、同一内容の嫌疑で再度逮捕されたり、捜査されたりはせず、また不起訴となった事件について改めて起訴されるということも基本的にはありません。
 

⑶ 前科がつかない

起訴には至っていない以上有罪判決を受けておらず、前科はつきません。
なお、被疑者として捜査対象になったという記録(前歴)は残りますが、一般には公開されない記録のため日常生活に支障はありません。たとえば履歴書の賞罰欄には前科の記入は必要ですが、前歴は書く必要がないのです。
 

4 不起訴を獲得するために

刑事手続きから解放されるなどの大きなメリットがある以上、逮捕・勾留後は刑事裁判を待つのではなく、不起訴獲得を目指して積極的に行動を起こす必要があります。否認事件、及び自白事件のそれぞれにおいてとるべき行動を解説します。
 

⑴ 否認事件(容疑を認めない場合)

不起訴を獲得するには、犯罪が成立しないことや犯罪を示す証拠がない又は不十分であることを主張します。
具体的にはアリバイを証明したり目撃者を探し出したりという行動が例として挙げられますが、否認事件でとくに重要であるのが黙秘権です。自身がやっていないことを安易に認めることは絶対に避けると同時に、必要に応じて黙秘することも重要です。捜査の進捗状況に合わせながらいかなる範囲で黙秘するか、黙秘した場合に考えられる不利益についても弁護士と慎重に打ち合わせる必要があります。
 

⑵ 自白事件(容疑を認める場合)

容疑を認める場合には起訴猶予を理由とする不起訴を目指すことになります。
起訴猶予とは、証拠は十分であるが、被疑者の状況から手続きを終了させて自発的更正に期待するというものです。その判断要素の一つに「犯罪後の情況」があり(刑事訴訟法248条)、被害者との示談が成立しておれば、犯罪後に被害者が宥恕(「ゆうじょ」許すこと)する意思を持つに至ったという情況を汲んで、検察官が不起訴処分にする可能性があるのです。
そこで、被害者との示談交渉を積極的に進める必要があります。もっとも被害者は加害者に対して嫌悪感情を抱いているケースが多く、身柄を拘束されている本人はもとより、ご家族からの交渉も拒否される可能性が高いでしょう。そのため公正中立な立場の弁護士が入って示談交渉を進めるのが賢明です。
これに対して、被害者が示談に応じない場合や薬物事犯などの被害者がいない犯罪では、供託、贖罪寄付といった方法があります。いずれの方法が有効適切であるかは弁護士と十分に相談しなければなりません。
 

5 まとめ

我が国の有罪率の高さ(99.9%以上)の背景には、検察官が確実に有罪判決を獲得できる事件を厳選して起訴しているという現実があります。だからこそ、不起訴処分を目指していち早く行動に出る必要があります。事件内容や嫌疑をかけられているご本人の意向も踏まえて、どのようなアプローチが最善であるかを津田沼法律事務所の弁護士がアドバイスします。

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