会社にばれたくない
犯罪に関与したとき、多くの方は勤め先に知られたくないと考えるはずです。本記事では、会社にばれる場合の具体例と、それぞれの対策についても解説していきます。
1 警察から連絡がいく
まず、原則として警察が逮捕などの事実を職場に報告することはありません。そのような告知義務を課している法律はなく、また、会社側の告知を受ける権利を認めた法律もありません。
ただし、例外として以下の場合には警察から連絡がいくことがあります。
・捜査の必要がある場合
たとえば、業務上横領罪などで会社が被害者である場合や、職場内での暴行事件、職場に盗品や盗撮データなどの証拠が保管・隠匿されている場合などです。
・職場の上司が身元保証人となっている場合
逮捕後、釈放の要件として身元引受人が求められることがあります。この身元引
受人に職場の上司を指名した場合には警察から連絡がいくことになります。
犯罪が会社絡みであれば職場やその関係者が捜査対象になる以上、会社に知られることを阻止することはできません。
身元引受人は、本人の身柄を引き受けて逃亡や証拠隠滅しないように監督ができる人であれば誰でもなることができます。家族や友人、恋人など、可能な限り会社関係者以外の方にお願いするとよいでしょう。
2 無断欠勤が続き会社が気付く
犯罪内容にもよりますが、逮捕されると最大23日間にわたって身柄が拘束されるおそれがあります。欠勤が続き会社からの問い合わせに家族が逮捕の事実を伝えてしまった、あるいは、連絡がつかないことを理由に会社が警察に捜索願を出したところ勾留されていることが判明したというケースです。
ここでは長期にわたる欠勤を回避することが重要です。逮捕されても、以下の場合には短期間で身柄が解放されます。
⑴ 微罪処分
微罪処分とは、犯罪が軽微であることを理由に、逮捕しても検察官には送致せず警察にて事件処理を終える手続きです。送検前に身柄が解放されますので、逮捕から長くても48時間後には自由になれます。
微罪処分となるには、被害額がおおむね2万円以下であること、犯情が軽微であることのほか、被害の回復が行われていることや被害者が処罰を望んでいないことなどが要件として挙げられます。そこで、軽微な犯罪の場合には、逮捕後早急に被害額や迷惑料等を賠償して被害者による処罰を要求しない旨の意思表示を取りつける(示談する)必要があります。
⑵ 勾留回避
通常は警察官によって逮捕されてから48時間以内に送検、さらにその後24時間以内に検察官が勾留請求するかどうかを判断します。もし勾留請求されてしまうと、最大20日間も身柄拘束されるおそれがあり、これでは会社にばれてしまいかねません。そこで、長期欠勤を避けたいのであれば勾留自体を回避することが不可欠ですが、ここでも示談が有効です。
示談の成立によって逃亡や証拠隠滅のおそれがないことを示せば、捜査を続行するにしても、勾留せずに在宅事件に切り替えてもらえる可能性が高まります。勾留請求されなければ、逮捕から遅くとも72時間以内には通常生活に戻れるのです。
3 会社への報告義務
数日の欠勤であれば病欠や有給休暇を充てるなどの方法によって切り抜けることは可能でしょう。
しかし、会社によっては、就業規則によって逮捕された場合の報告義務を課している場合があります。この義務に従って報告した場合には当然、会社の知れるところとなります。また、ウソをついたり隠したりしたことが後日発覚した場合は、そのこと自体が懲戒事由となる可能性があります。
まず、逮捕=有罪ではありません。判決が確定するまでは推定無罪の原則が働き、多くの判例でも逮捕されただけでは解雇事由にはならないとしています。
その上で、会社に正直に事実を報告するかどうか、報告するのであればどのタイミングが適切かは、犯罪の種類や内容、刑事手続きの今後の見通し、ご本人が従事している役職や業務内容などを総合的に考慮する必要があります。刑事手続きや労働問題にも明るい弁護士にアドバイスをもらうのがよいでしょう。
4 新聞やテレビなどの報道
罪を犯せば必ず報道されるわけではなく、報道する基準についても、世間の注目を集めるかどうか(事件の重大性や話題性、被疑者の知名度など)といった視点で、各報道機関が独自に判断しているようです。ただ、被疑者の職業が公務員や医師、弁護士、教師などの場合には報道されやすい傾向にあります。
経緯としては、警察や検察のマスコミ担当者から情報がリークされて、被疑者の逮捕直後や送検のタイミングで報道される場合がほとんどです。
対策としては、捜査当局に意見書を提出する方法があります。この意見書には法的拘束力はありませんが、被疑者の事情を説明して捜査当局からマスコミにリークしないよう求めます。また、警察介入前に示談を成立させて刑事事件化しないことも、報道阻止には効果的です。
5 履歴書
これから就職を考えている会社にばれたくないという場合もあるでしょう。問題は履歴書の記載です
履歴書の賞罰欄には、前科(有罪の確定判決を受けた事実)を記載しなければなりません。記載しなかったりウソを記載したりした場合には、経歴詐称として懲戒解雇事由になります。
これに対して、微罪処分や不起訴により有罪判決は受けていない、あるいは在宅事件で現在捜査中である場合には、逮捕の事実(前歴)は認められますが、前科には該当せず、履歴書に記載する必要はありません。
前科がある場合には賞罰欄のない履歴書を利用するとよいでしょう。昨今賞罰欄が設けられている履歴書は多くなく、記入欄がなければ、前科をわざわざ自分から書く必要もありません。
6 まとめ
逮捕などが会社にばれないためには初期の対応が重要です。早ければ早いほど会社に知られることなく事件を解決できる可能性があります。「会社にばれたくない」「会社に報告すべきか悩む」という方には、津田沼法律事務所の弁護士が最善のサポートを尽くします。