050-3623-0205 未成年者に対する性犯罪と厳罰化の動き：法改正の背景と実情
性犯罪日本では、未成年者が性犯罪の被害者になる事例が増えていますが、他の先進国と比較しても、未成年者を性犯罪から守るための対策や厳罰化が遅れているとの指摘がありました。
そこで、2023年（令和5年）7月13日から性犯罪規定が変わりました。
目次
強制性交罪から不同意性交等罪への変更
従来の強制性交罪は、暴行や脅迫により抵抗できない状態にしたうえで、性交等を行う行為が処罰の対象となっていました。
しかし、この構成要件では、暴行や脅迫がなくても、被害者がフリーズ状態に陥った隙に性交されてしまった場合は、強制性交罪として処罰することができませんでした。
新設された不同意性交等罪では、対象範囲が広がっています。
暴行や脅迫以外にも、障害、アルコール、薬物、フリーズ、虐待、立場による影響力が原因で、被害者が同意しない意思を形成したり、表明したり、全うすることが難しい状態に陥った状態で性交をした場合に、不同意性交等罪に該当することになります。
「同意しない意思を形成したり、表明したり、全うすることが難しい状態」というのは、簡単に言うと、
- ・嫌だという気持ちを持てない。
- ・嫌だと言うことができない。
- ・嫌だという気持ちを貫くことができない。
という意味になります。
性交等に至らないわいせつ行為についても、同様に、不同意わいせつ罪が新設されました。
- ・不同意性交等罪は、5年以上の有期拘禁刑
- ・不同意わいせつ罪は、6月以上10年以下の拘禁刑
がそれぞれの法定刑となっており、重い刑罰に処せられます。
性交同意年齢が「16歳未満」に引き上げられた
従来は、性交同意年齢は13歳未満でした。
つまり、13歳未満の少年少女と性交した場合は、相手の同意があっても、強制性交罪に問われていました。
この性交同意年齢が「16歳未満」に引き上げられました。
ただ、この年齢だと高校生カップルなどの同世代の少年少女の交際も処罰の対象になってしまうため、13歳以上16歳未満の少年少女とその性交相手の年齢差が5歳以下である場合は、処罰の対象から外しています。
性的グルーミング罪の新設
未成年者に性的な目的を隠して近づいて、手懐けた後で、性的な写真を撮らせたり、性的な要求をする事案が問題になっていましたが、従来の刑法では、処罰が難しいという問題がありました。
改正刑法では、性的グルーミング罪が新設されました。
具体的には、16歳未満の者に対する面会要求等に関する罪として、刑法182条に定められています。
16歳未満の少年少女に対して、わいせつの目的を隠して面会を要求したり、わいせつな映像を送るように要求した場合は、処罰の対象となります。
この場合の法定刑は、1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金です。
また、わいせつ目的で16歳未満の者と面会をした場合は、2年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金となります。
性的な映像の盗撮が「撮影罪」として処罰される
性的な映像の盗撮が「性的姿態等撮影罪」として処罰されるようになりました。
性的姿態等撮影罪は、刑法ではなく、性的姿態撮影等処罰法（性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律）に基づく刑罰です。
性的姿態等撮影罪は次の場合に成立します。
- ・正当な理由なく、人の性的な部位・下着などをひそかに撮影する
- ・正当な理由なく、16歳未満の少年少女の性的な部位・下着などを撮影する
16歳未満の少年少女を対象とした性的な撮影は、盗撮ではなく堂々と撮影した場合でも処罰の対象になります。
性的姿態等撮影罪の法定刑は、3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金です。
さらに、盗撮した性的な映像を提供する行為も、処罰の対象となり、特定の人に提供する場合は、3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金、不特定若しくは多数の者に提供し又は公然と陳列した場合は、5年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金、又はこれの併科とされています。
性犯罪の公訴時効期間が延長
犯罪行為が行われたときから一定期間経過すると、刑事訴訟を提起できなくなります。
この期間を公訴時効といいますが、性犯罪の公訴時効期間が延長されました。
具体的には次のとおりです。
- 不同意性交等致傷罪
- 20年
- 不同意性交等罪等
- 15年
- 不同意わいせつ罪等
- 12年
なお、被害者が被害当時に18歳未満の場合は18歳になった時から上記の時効期間が進行することになります。
まとめ
不同意性交等罪が新設されたことにより、これまで立件できなかった性犯罪も処罰の対象になりました。
また、盗撮が撮影罪、盗撮映像の提供も提供罪として処罰の対象となりましたし、性的グルーミング罪も新設されました。
未成年者との性的な交渉はこれまで以上にリスクが高まったと言えます。
一旦逮捕された場合は、実名報道されたり、仕事や学校を辞めさせられる可能性もあります。
性犯罪で逮捕されそうになった場合は早めに弁護士に相談することが大切です。
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